絶対領域
「ぼ、僕が不登校になってから、ゆ、ユウは変わりました」
「ゆーちゃんが、変わったの?ゆかりんじゃなくて?」
「は、はい……。ぼ、僕をいじめてた人たちを、ユウが一人でやっつけたんです。そ、それが原因で、人気者だったユウは、問題児扱いされちゃったんですが……」
ちょっと乱暴で暴力的で、どこか猟奇的な雰囲気のある。
そんなユウの変化に、学校側も家族も困惑してたらしい。
それでも。
「ぼ、僕には、何よりも誰よりもかっこいい、ひ、ヒーローに見えたんです」
僕だけの、ヒーロー。
憧れの存在。
かけがえのない、味方。
『安心して?僕が守ってあげる』
そう優しく微笑みながら、たった一人で僕を守ってくれていた。
僕を見放さないでいてくれた。
初めはすごく嬉しかった……けど。
「だ、だけど……ゆ、ユウの守り方が、徐々にひどくなっていって……」
僕を安心させるために、敵を油断させるために、口調もゆったりとしたあざといものに変わって。
僕を守ろうとする信念に、ちょっとずつ、執着心が混ざっていった。
「ひ、引きこもっていちゃダメだと思って外に出ようとしても、ゆ、ユウは止めて、僕の部屋から出そうとしなかったんです」
気づいた時には手遅れで。
ユウの心は、真っ黒に淀んでしまった。
僕だけを大事にして、自ら傷だらけになりにいった。