絶対領域




『一度抵抗できたんだから、できるよ』



自信のない僕を、励ましてくれた。


僕の中にも勇気があると、信じてくれた。



『ユカなら大丈夫だよ!』



ダイジョーブ。

なんて陳腐で、薄っぺらいんだろう。


それでも、ユウに言われたら、なんでもできる気がした。



……そんなの、一時のまやかしに過ぎないのに。




「じ、自分の意思をはっきり言えるユウみたいになりたくて……こ、怖かったけど、頑張って立ち向かってみたんです」


「ゆかりん、すごいじゃん!」


「……い、いえ、全然すごくない、です」



俯きがちに、首を左右に振る。



「た、立ち向かったけど、だ、ダメでした。逆ギレされて、そのまま……」



これっぽっちも、大丈夫なんかじゃなかった。


なけなしの勇気は、いとも簡単に砕かれて。

立ち上がることもできなくなってしまった。



もう無理だと思った。




「そ、それから、が、学校に行くのも辛くなって、い、家に引きこもるようになりました」



ユウは、自分を責めた。

軽々しく助言した僕のせいだ、って。



違うのに。


僕が弱いせいなのに。




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