絶対領域




クラスメイトの女の子は、視線を少し泳がせてから、私を真っ直ぐ見据えた。



「き、昨日は本当にありがとうございました!」



もしかして、昨日からずっと気にしていたのだろうか。


だからわざわざ、ここに……?



私は巻き込んでしまった側で、不謹慎かもしれないけど……嬉しいな。


私のことを心配してくれるクラスメイトがいる。

それがすごく幸せで。



ずっしり重かったプレッシャーが、消えていく。




『明日、頑張ろうね!』


『や、矢浦さん、ありがとうございます!また……っ、また明日!会えると、信じています!!』



昨日交わした約束を、守れてよかった。




「今日は頑張りましょうね!」



昨日私が言った言葉を、今度は女の子が言ってくれた。


ちょっとは距離、縮まったかな。

だったら、いいな。



「うん、頑張ろう!」




不思議だね。


見た目が可愛くなったわけでも、友達になれたわけでもないのに、やる気があふれてくる。



なんだかこういうの、青春みたいだ。




高校生になって初めての文化祭。

ドキドキだらけだけれど、早速いいことがあって幸先がいい。


これからもっともっと楽しくなりそうな予感がする。




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