絶対領域
そして、ついに文化祭が始まった。
また緊張が復活してきたけど、もう逃げられない。
女の子は笑顔が一番可愛いってよく聞くし、とにかく笑おう。笑ってごまかそう。そうしよう。それしかない。
意を決して、教室の扉をスライドさせた。
童話喫茶、オープンだ。
「いらっしゃいませ!」
「あっ、姉ちゃん!!」
一番最初のお客様はまさかのせーちゃん。
せっかく気合い入れて、最高に輝いた笑顔を作ったのに、出端をくじかれた。
ゆかりんとオウサマとランちゃんもいる。
その後ろに、180センチ越えのオリの顔も見えた。
そういえば、皆で来るって言ってたっけ。
「も、萌奈さん、こんにちは」
「わお、ビューティフォー!萌奈氏、それは白鳥のコスプレかな?」
「そうだよ。『白鳥の湖』の白鳥。すっごく素敵な衣装でしょ?」
衣装は本当に素晴らしいの、衣装は。
自慢げにくるりと一回転してみたら、ランちゃんがチラチラ見ながら唇を尖らせた。
……あ。
ランちゃん、今日は身を隠してない。珍しい。
私たちに対して、警戒しなくなってる証だね。
「ふ、ふーん?馬子にも衣装ってやつだな」
「はあ!?何言ってんだ、蘭次郎!お前の目は節穴か、こら!?姉ちゃんは世界1綺麗だろうが!!」
「お、お前の目こそフィルターかかりすぎてんじゃねぇのか!?このシスコンヤロー!!」
警戒しなくなっても、口喧嘩はしちゃうのね。
やれやれ。
ランちゃんとせーちゃんの言い争いが本格化してしまう前に、オリが面倒くさそうに仲裁してくれた。