絶対領域



俺は、あずきの関係性に。

あずきは、俺の情報力に懸けた。


利害の一致で、手を組んだんだ。



悪魔が、獣と戯れるのも、また一興じゃないか。




「今度のスカウトは引き受けて、神亀に入った。初めは、天使に会う目的のためのビジネスパートナーだったけど、だんだん居心地がよくなっていった。今じゃ、副総長になっちゃってるくらい」



悪魔が族の一員になったことは、すぐに噂になった。


最初こそ、多くの敵が悪魔を狙って神亀を襲ってきた。


その度に返り討ちにしてやったら、誰も来なくなっていって、いつしか噂自体の信ぴょう性が薄れていった。




「だけど結局、最後まで、天使を……萌奈ちゃんを捜しだすことはできなかった」


「現在地がわかっても、すぐ別の場所にいっちゃってたでしょ?」


「転々としすぎだよ」



そう言い返せば、萌奈ちゃんは「ごめんごめん」と苦笑した。



位置がわかって駆けつけても、そこにはもう脱走者と天使はいなくて。


次はどこに向かったのか、足跡すら掴ませてはくれないんだ。




年が明けて、吐く息が溶けても、会えないまま。

しかし、春になり、状況は一変した。




『あいつが……萌奈が、帰ってきた……!』



突然あずきから連絡をもらった時は、信じられなかった。



天使は、紅組の脱走者と逃げ回っていたはずだ。


なぜ。

どうして。


何か起こったのは明白だったが、その肝心の内容がわからず、疑問が次々と浮かんできた。


それでも、ようやく対面できる嬉しさが勝っていた。



< 364 / 627 >

この作品をシェア

pagetop