絶対領域
初めて萌奈ちゃんに会った日を、鮮明に憶えてる。
想像していた以上に、綺麗で、白くて。
本物の天使みたいだと思った。
天使みたいに、消えてしまいそうだ、と。
「周りが勝手に噂して、過信したり怖がったりしてるだけで、俺の力はそんな大したことない。天使も見つけられなかったし」
自虐しながら、後ろ頭をかく。
だけど、さ。
これがありのままの俺だから。
悪魔の正体がこんなんでも、がっかりしないで。
「噂とは全然違っただろうけど、どう?俺が悪魔だって、信じてくれた?」
「まだちゃんと整理しきれてないけど……うん、信じたよ。話してくれてありがとう」
自分の中でもう一回咀嚼するみたいに、萌奈ちゃんはうんと深く頷いた。
俺のほうこそ。
信じてくれてありがとう。
話してよかったよ。
「私の……“私たち”の秘密を、本当に全部、知ってるんだね」
ミルクティー色のふわふわな髪で、目元まで陰る。
ごめんな、と。
謝るのは少し違う気がして、口を引き結んでしまった。