絶対領域





ファミリーレストランに入る前は、青とオレンジのグラデーションだった空が、今じゃ藍色に飲み込まれかけている。


夕闇は、すぐそこまで侵食していた。




「オウサマは稜くんと一緒に帰れば?」


「それも天然毒舌か!?」


「私の発言が全て毒舌だとでも?」


「毒舌ではないのか?」


「違うわっ!!」




オウサマの中でどんな解釈されてるの?

それとも私の言い方がきつかった?



「我はてっきり、ボディーガードをクビにされたのかと思ったぞ」


「違うよ……」



さっきよりも威勢を失くして否定する。


クビって何。

私にそんなことできる権限ないって。



「ボディーガード?何それ?」


話についていけていない稜くんに、ほっこり癒された。ポカンとしてる、あー可愛いー。




「オウサマが役に立たないとか、邪魔とか、そばにいると逆に目立つとか、爆弾発言がおっかないとか……そういうことじゃなくて」


「……ユーは我が嫌いなのか?」


「だから違うってば!」



いや、最後のは、ちょっぴり本心だけど。

そういうことじゃない、って言ったじゃん!


オウサマが嫌いだったら、偽デートなんかにいちいち付き合わないよ。



「稜くんを一人で帰らせられないでしょ?」



半ば呆れながらため息を吐く。


急に名前が出てきて、稜くんはパチクリと瞬きをしていた。




< 420 / 627 >

この作品をシェア

pagetop