絶対領域
ファミリーレストランに入る前は、青とオレンジのグラデーションだった空が、今じゃ藍色に飲み込まれかけている。
夕闇は、すぐそこまで侵食していた。
「オウサマは稜くんと一緒に帰れば?」
「それも天然毒舌か!?」
「私の発言が全て毒舌だとでも?」
「毒舌ではないのか?」
「違うわっ!!」
オウサマの中でどんな解釈されてるの?
それとも私の言い方がきつかった?
「我はてっきり、ボディーガードをクビにされたのかと思ったぞ」
「違うよ……」
さっきよりも威勢を失くして否定する。
クビって何。
私にそんなことできる権限ないって。
「ボディーガード?何それ?」
話についていけていない稜くんに、ほっこり癒された。ポカンとしてる、あー可愛いー。
「オウサマが役に立たないとか、邪魔とか、そばにいると逆に目立つとか、爆弾発言がおっかないとか……そういうことじゃなくて」
「……ユーは我が嫌いなのか?」
「だから違うってば!」
いや、最後のは、ちょっぴり本心だけど。
そういうことじゃない、って言ったじゃん!
オウサマが嫌いだったら、偽デートなんかにいちいち付き合わないよ。
「稜くんを一人で帰らせられないでしょ?」
半ば呆れながらため息を吐く。
急に名前が出てきて、稜くんはパチクリと瞬きをしていた。