絶対領域
チラリと一瞥したオウサマのほうが、よっぽど辛そうにしている。
日本ではオッドアイは珍しいから、からかわれたり煙たがられたりしているのかな。
皆とは違う自分を気にしてる稜くんを、オウサマも気にしているのかもしれない。
「稜くんは、自分の目を気味悪いって思ってる?」
穏やかに尋ねれば、弾かれたように顔が上がった。
ハッとする稜くんに、優しく微笑む。
「自分の目、嫌い?」
「っ、ううん、嫌いじゃない!」
左右に振られた頭を、ポンポンと撫でる。
あず兄の真似だ。
「私も、稜くんの目を気味悪いとは思わないし、好きだよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと。家族と同じ、素敵な色ね」
稜くんは嬉しそうに、それでいて照れ臭そうに頬を緩ませた。
あのね、稜くん。
同じなのは、右目だけじゃないんだよ。
左目も、今は亡き父親とおそろいなんだよ。
いつか全てを思い出しても、思い出せなくても。
両の目の色を、ずっと愛していてね。
「サンクス、萌奈氏」
「何のこと?」
「……いや、なんでもない。なんでもないのだ」
すっとぼける私を見透かして、オウサマは静かに目を閉じた。
きっと、あの夕間暮れの明かりさえ、濃い褐色の双眼には耐えられない。