絶対領域




俺の体重を支えきれずに、萌奈は壁にもたれかかりながら、ずるずると下に沈んでいった。


どちらも座り込んでしまっても、抱きしめ続けた。



お互いの温もりを求めていたかった。





『……知ったら、離れてくと思ってた』



スイッチを入れれば電気が点くにもかかわらず、薄暗い和室の隅で寄り添っていた。



もうすぐ夜が更けていく。

闇色の世界が、動き始める時間だ。



『だからずっと言えなかった』


『離れていかないよ』



腕を緩めれば、0距離だった俺と萌奈の間にわずかな空間ができた。



暗くても、近くにいるからだろうか。


萌奈の顔がよく見える。

ちょっとムッとした、可愛い顔。




『出会った時だって、半分冗談のつもりだったんだ。俺と逃げる覚悟あるか、なんてさ』


『だからあの時、しつこいくらい確認してきたんだね』



きっと、どうかしてたんだ。

俺も、萌奈も。



『俺と一緒に逃げてくれると思わなかったんだ』



殺すとか殺されるとか、そういうの無縁そうだったし。


怖がるか、そっちも冗談っぽく返すか。そのどちらかだと予想してたら、まさかの大はずれ。



しぶとく生きるだとか、そばにいたいとか。

正直、全然信じられなかった。



< 460 / 627 >

この作品をシェア

pagetop