悪いオトコ
「サラダ取り分けてあげたよ? 何ぼんやりしてるの?」

声をかけられて、顔を上げる。

テーブルを挟んだ向かいで、サラダを盛ったお皿を差し出す彼に、

「あ…ありがとうございます」

お礼を言って受け取る。

サラダをフォークで口に運ぶ私を頬づえをついて眺めながら、

「……どうして、いつまでも敬語なのかな?」

訊ねられて、「えっ?」と、訊き返す。

「……俺に、気を許してない?」

口元は緩んで笑っているように見えるのに、目は少しも笑ってないように感じる。

「……そんなことは……」

「…じゃあ、もっと気軽に喋ってよ?」

テーブル越しにスッと手がつかまれる。

「……もっと、君と距離を縮めたいしね」

見つめる視線に囚われそうにもなって、

「……離してください」

手を引く。

「……どうして?」

手を離さないままで、

「……どうして、そんなにつれなくするの?」

外した目線を合わせてくる。


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