悪いオトコ
……いくら言葉を重ねられても、すぐには信じることなんてできないし、無意味なことだとも思っていたのに、

次第にその真意は、明らかになってきた。

小さなお金でも、貸し借りのために会ううちに、

彼と会うことが、いつしか当たり前にもなってきていた。

……そういうことだったのかと、今さらのように思う。

それは、どこか罠にでも嵌められたような気分だった。

あまり深みには落ちない間に、別れようとしていたのに、いつしか付き合いが当然にもなってくるなんて、

まして、そばに彼がいるのが普通に感じられるのが何より不思議でならなかった。

それが、最初からこの男の思惑だったのなら、私はまんまと受け入れてしまったことにもなる。

「……また、何か考えてる?」

探るようにも、訊いてくる。

「なんにも……」

そうとしか言いようもない。

悔しいけれど私はもう彼の手に落ちていて、いつの間にか別れを考えることさえできなくなっていた……。


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