悪いオトコ
3
別れられないと気づいてからは、別の意味で息苦しくもなった。

彼とは何度会っても上辺の付き合いにしか感じられず、いつ終わってもおかしくないようにしか思えなかった。

好きになればなったで、関係は変わらず不毛にも思えた。

「……どうして、」

キスの後で、口にする。

「……どうして?」

目の前の彼が、私の言葉をそのまま返す。

いつ終わってもおかしくないわけは、もう一つあった……彼は、キス以上に及ぶことは決してなかった。

「……したくないの?」

聞いてみたところで、いつも答えは一緒だった。

「したいの?」

彼は何も感情を見せず、私の言うことを同じように口にして、

「君がしたいなら、考えてもいいけど。……君、俺とそうなりたいとは思ってないよね?」

はぐらかすようにも話した。

したくないかどうかに、はっきりとした意思なんてなかった。

好きだからそこに行き着くだけで、だからこそ、この男を自分が好きになってしまったことが、

ただ悔しくて、苦しかった。

< 18 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop