平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「いいえっ! 私の世界でも、キスは――って、違います! ディオンさまは男性がお好きなんじゃないんですかっ? もしかして、両方いける? じゃ、なくてっ!」
 
 慌てている桜子に、ディオンはいつになく大きな声で爆笑する。

「サクラはなにを言っているんだ? クッ、クッ……」
「イアニスさまがお好きだと仰ったじゃないですかっ! それなのに、私ともキスできるなんてっ」

 桜子の誤解を理解したディオンだ。

「イアニスは兄のように慕っているという意味だ。男とキスするなんて、考えただけでも気持ちが悪い」
「ええっ? 兄のように……? すみませんっ!」

(今までのことは私の誤解だったの……?)

 ディオンから少し離れて、桜子は頭を深く下げた。

「まったく……私が好きなのはそなただ」

 簡単に好きだと言われて、今までの女官たちへの言動から、それが本心なのかわからない桜子だ。

「ディオンさまは、異世界から来た私が珍しいだけです」

 好きであって、愛しているわけではないのだろう。ディオンにとって自分はペットのようなものなのかもと、思った。

「これほどサクラを好きなのに、信じてくれないのか?」
「信じろと言うほうが無理があります。もうキスしないでください」

 桜子が想っていい相手ではないのだ。ディオンと親密にならないほうがいい。

「サクラ! 私はそなたに誠実でありたい」
「私以外の……女官でも誰でも口説いてください」

 ディオンは悄然とした表情になった。

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