平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
(うわ……痺れてる……)

「抱いて連れて行こう」
「い、いいえ! そんなわけにはいきません! 少し足が痺れただけですから」

 今にもお姫様抱っこをされそうで、桜子は慌てて首を横に振った。

「そんなに長い時間、ここにいたんだな」

 自分を待っていてくれた桜子に、愛おしさが増すディオンだ。

「なおさら、そなたを抱き上げていきたい」
「む、無理です! もう治りましたからっ」

 桜子は思いっきり拒否をした。影のようにいるラウリとニコ、そして衛兵の目が気になる桜子だ。

 それに桜子はディオンと親密になりたくて、ここにいたわけではない。ひとえにザイダのお礼をしたかったのと、信じていなかったことを大急ぎで謝りたかったのだ。

 しかし、この場所では雷のせいでちゃんと話すことが出来ない。

「ゆっくり行こう。雷も少し遠くになったようだ。ニコ、カリスタが探しているといけない。私と一緒にいると伝えにいきなさい」

 ディオンはニコに指示を出すと、桜子の肩を抱きながら渡り廊下を進んだ。

 後宮の自分の部屋へ連れていかれるのかと思いきや、桜子は初めて、ディオンの私室がある宮殿の二階へ足を踏み入れた。

 宮殿の門のように、やはり青、黄、緑が鮮やかなタイルの壁や廊下が美しい。桜子はインテリアなどに詳しくないが、トルコや中央アジアのタイルを見たことがあり、うろ覚えだがよく似ている気がした。

 ディオンが桜子を連れてきたのは娯楽室ではなく、私室の居間だ。部屋に入っても、ディオンは桜子の肩から手を離せないでいた。

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