平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「サクラ?」

 桜子の突拍子もない行動に驚いたディオンだが、そばにいたイアニスも絶句している。

「な、なにをなさっておいでで?」

 我に返ったイアニスが、桜子の手を離そうとする。

「やっぱり! ディオンさま、鍛えていますよね?」

 袖の下の腕は、桜子が知る限り一番の筋肉質であった。それから桜子は、ディオンの利き手である右手を目の前に持って、まじまじと見つめる。

「……ここも」

 右手の人差し指の下のところが硬くなっていた。

 ディオンはフッと笑みを漏らすと、そのまま桜子の手を繋ぐ。

「そなたには隠せないな。話をするから、ついて来て。イアニス、出かけてくる」

 ディオンは桜子の手を引いて、宮殿の門へ向かう。

「どこへ行くのですか? 話ならここでも――」
「遠乗りをしよう。私の好きな場所へ行こう」

 門まで来ると、ディオンのところへ門番の兵とは違う男が駆け寄ってきた。

「馬を」

 馬番らしき男は急いで戻り、ディオンの愛馬を連れてきた。そしていつの間にかラウリとニコもいる。

「ディオンさま、私は馬に乗ったことがありません」

 近くで見る馬は意外と大きい。

「大丈夫だ。決して落とさない」

 ディオンはひらりと身軽に騎乗してから、桜子に手を差し出す。ディオンの手を掴んだ瞬間、桜子は引っ張られ、ふわりと前に座らされた。

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