平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「いいえ! サクラさまのためにお弾きになっていたのです。そうでなければ窓の下でお弾きになるはずはありません」
「えっ!? ディオンさまは窓の下で弾いていたのっ!?」

 驚いて桜子は目を丸くした。

「はい。最初は別のところでお弾きになっていたようですが。本当に、殿下はサクラさまを大事に想っていらっしゃいますね」

 ザイダはにっこり微笑んだ。

 
 朝食後、桜子はディオンに会いに宮殿へ行った。いまや桜子が宮殿に出入りするのを咎める者は誰もいない。

 薄い桃色のヒラヒラした衣装が足にまとわりつき、急ぎ足だと転びそうになるが、桜子はかまわずディオンの姿を探した。

「サクラさま、いかがいたしましたか? 昨日は大変でしたね」

 政務室からイアニスが出てきて、桜子の後ろ姿に声をかけた。

「あ! イアニスさまっ、ディオンさまを探しているのですが。どちらにいますか?」

 イアニスに聞いたとき、政務室の扉が開き、ディオンが顔を見せる。桜子を見て、ディオンは口元に笑みを浮かべた。

「サクラ、そなたから会いに来てくれるとは。どうしたのだ?」

 桜子はなにも言わずにディオンの腕を掴むと、ゆったりとした長衣の袖を上のほうに捲った。

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