平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 憂い事があるディオンにとって、今自分がここにいるのは邪魔なのではないだろうかと、桜子はある程度食事をしてから口を開く。

「ディオンさま、お料理も食べてください。私はこれで失礼いたします」
「サクラ……?」

 ふと我に返ったディオンは、手に持っていたグラスをテーブルに置く。

「日に当たったせいか、頭痛がして……」

 桜子はわざとらしくこめかみに手をやる。

 頭痛などなかったが、そう理由づければ退出出来て、ディオンは自分にかまわずに思案できると思ったのだ。

「頭痛が? 医者に診てもらおう」
「い、いいえ! 診てもらうほどのことではないです。寝れば治ると思います。おやすみなさいっ」

 桜子は立ち上がり、お辞儀をして扉へ向かう。扉の取っ手を掴んだとき、反対の腕を掴まれ、背後から抱きしめられた。

「様子がおかしいな。本当に大丈夫なのか?」

 耳元で静かに問いかけるディオンの声。

 身体の芯が疼くような反応をしてしまい、桜子はぎゅっと目を閉じる。

「そ……そんなことないです……」

 包み込むように回されたディオンの腕に囚われてしまい、桜子は動けない。

「眠れば治るのか?」

 桜子は声に出すことが出来ず、コクッと頷く。次の瞬間、ふわりと抱き上げられていた。

「ディオンさまっ!?」

 慌てふためく桜子に、ディオンは美麗な微笑みを浮かべ、奥の寝室へ足を進める。

「下ろしてくださいっ!」

 ドクン、ドクンと激しく全身が脈打ち、パニックに陥る手前だ。

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