平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
夕刻。窓辺で、弦の部分が丸い日本の琵琶のような形の楽器で音楽を奏でる男がいた。

 ベルタッジア国のアシュアン領を統治する、第三皇子ディオンだ。

 黄金のように輝く美しい髪は肩より長く、柔らかくて癖がある。瞳は宝石のアメジスト色で、鼻梁はスッと高く、男性でいてピンク色の唇。

 生まれたときから、その美しさで誰をも惹きつける魅力の主であるディオンだ。

 ディオンはふと、楽器を奏でる手を止めた。ディオンの腹心の家臣イアニスが部屋に入ってきたせいだ。

「せっかく美しい音色でしたのに」

 イアニスはがっかりした表情を浮かべる。

「私の奏でる音楽は、女性に聴かせるためのものだ」

 幼い頃から音楽をたしなんでいるディオンの右に出る者はいない。

ベルタッジア国きっての美形で、国の女性たちの憧れの的である。

 ディオンより十歳年上で、現在三十歳のイアニスは見事な体躯をしており、浅黒い肌にブラウンの髪。その髪は短く癖毛だ。

「ディオンさま、私にまで演技をする必要はないと申しておりますのに。退屈で、からかっておられるのですか?」

 イアニスは部屋に入った段階で、遠巻きに大きなうちわでディオンに風を送っていた女官たちに下がるように指示していた。

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