平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 ディオンは立ち上がり、窓辺から離れる。身にまとう美しい織りの長衣は薄布で、暑い日でも涼しい。

 腰ほどのチェストの上に楽器を置きながら、イアニスに視線を向ける。

「イアニス、このような時間に珍しいな」

 超絶美形なディオンの気だるげな表情は艶っぽさがある。幼い頃から仕えているイアニスは免疫があるものの、他の者は男でも見入ってしまうほどだ。

「はい。警備局から連絡があり、この辺では見ない娘を捕まえたとのことなので、ご報告に上がりました」
「ベルタッジアの民ではない?」
「娘は大柄な男三人を倒したそうです。警備兵は術師ではないかと」
「術師? 術師がいたのは百年も前のことと聞いているが?」

 整った眉を寄せ、首を傾けるディオンだ。

「娘は変な棒を持っているそうです」
「変な棒とは、興味深いな。今、どこにいる?」

 ディオンは男を三人倒したという娘に興味を覚えた。

「町の警備局の牢屋に」
「行ってみよう」

 ディオンは扉に向かい、イアニスは後を追う。

 廊下に出たところには、ふたりの屈強な体躯の男が立っている。

 ディオンの護衛であるラウリとニコだ。ふたりとも二十五歳で、やはりディオンと一緒に育ったと言っても過言ではないほどの関係だ。

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