平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「……ダフネ姫が可愛いので、泣かせたくない。だから、ディオンさまに恋心を抱いてはいけないと釘を刺されました」
「本当に? だとしたら、私がそなたを愛していることが身に染みただろうな」
 
 ディオンはフッと笑みを漏らす。

「私たちを引き裂く力など、皇妃にはない。サクラ、今日のことは忘れるんだ」

 ディオンは桜子の額に口づけを落とした。

 
 アシュアン宮殿に着いたのは、午後を回った時間だった。

 桜子を部屋へ送り届けたディオンは、イアニスに話があると言ってすぐに政務室へ行った。

 ザイダが昼食を用意するために部屋を出たところで、カリスタがやってくる。

「サクラ! 大丈夫だったかい?」

 カリスタは桜子に怪我はないかと、両手で触れていく。

「どこも怪我をしていませんから、安心してください」

 心配するカリスタもなにもされていないようで、桜子はホッと安堵して微笑む。

「よかったよ。イヴァナ皇后になにを言われたんだい?」

 桜子はディオンに説明したとおりに話をした。

 カリスタに余計な心配をかけたくない。誰にも言わずに、この国を去らなければと決心していた。

「恋心を抱いてはいけないだなんて、今さら遅いんだよ。サクラ、気にしないでいいんだからね。お前さんとディオンさまはお似合いさ。ディオンさまが心を許す女は、お前さんしかいないんだよ」

 カリスタは口をへの字にして不快感を露わにする。

 
< 170 / 236 >

この作品をシェア

pagetop