平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 一方、後宮を出たディオンと桜子は門へ向かっていた。

「ディオンさま、カリスタとエルマが別室にっ!」

 どんどん進むディオンに、桜子は息切れする一歩手前だ。

「ふたりは心配いらない。すでに帰している」

 イアニスが付き添い、アシュアン領へ向けて出発していた。ラウリとニコは思案顔で、後宮を出たところで待っていた。

 ディオンと桜子の姿に、彼らはホッと安堵した顔になる。ディオンはふたりに頷き、門へ向かった。

 白馬に飛び乗り、桜子に手を差し出して自分の前に座らせた。手綱を引き、向きを変えて馬を走らせる。


 
 皇都の町を抜け、荒野に入り、岩が転がる荒れた場所で馬の足を止め、ディオンは地面へ降り立つ。

「サクラ」

 ディオンに両腕を差し出され、桜子は地面へ降ろしてもらう前から、たくましい腕に強く抱きしめられた。

「不安な思いをさせた。怖かっただろう?」

 ディオンの温かい腕の中で、桜子は小さく頭を左右に振る。

「なにを言われた?」
「……異世界から来た私を見たかっただけ、と」
「そんな嘘は信じない。呼ばれた理由を話すんだ」

 桜子の言葉を信じないディオンは、アメジスト色の瞳で射るように見つめた。桜子は懸命に頭を動かす。

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