平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 食事を終えたディオンと桜子に、ルキアノス皇帝は勧めた。

「ありがとうございます。サクラ、先に部屋へ行っていなさい」

 表情の硬いディオンだが、ルキアノス皇帝とまだ話すことがあった。

「はい」
 
 桜子は立ち上がり、ルキアノス皇帝とディオンにお辞儀をする。部屋へ案内する女官が扉の前で待っていた。
 
 そのまま桜子が案内された部屋は、ディオンが十五歳になるまで暮らしていた部屋だと女官が教えてくれる。そしてその女官は、アラーラ皇妃に仕えていたとも。

「では、カリスタのことも知っているんですね?」
「はい。カリスタさまにはとてもお世話になりました。お元気でしょうか?」
「一時は危なかったのですが、今は回復しています」

 今回のことはカリスタに知らされていないよう桜子は祈る。心臓に悪いはずだ。

 部屋はほぼアシュアンと同じ造りで、女官が去ると、桜子は寝室へ足を踏み入れた。そして、ぐったりと寝台の端に腰を下ろす。

 張りつめていた緊張から解放されて、今頃になって手が震えてきた。

「ルキアノス皇帝が間に合わなかったら、私は死んでいた……やっぱり、ディオンには温情をかけてほしい……」
「そうだな。大事なあなたを助けてもらった」

 ひとりごとだったはずが、答えが返ってきた。いつの間にか入ってきていたディオンだ。

「ディオンさまっ!」

 まだ時間がかかるかと思っていた桜子は驚いて、弾かれたように立ち上がる。

「サクラ」

 ディオンは腕を広げ、桜子を抱きしめる。腕の中に華奢な身体を閉じ込め、ホッと息をついた。

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