平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「ここはアシュアン宮殿よ。私は女官頭のエルマ」
「アシュアン宮殿?」

(やっぱり宮殿なんだ)

「ええ。ディオンさまの命により、あなたはここに連れてこられたの」

 桜子は部屋の中を見るために頭を巡らす。

 宮殿と言われたが、桜子の想像していた『宮殿』のイメージとは全く異なる。この部屋にはなんの飾りもない木のチェストと、三人が座れそうな木のソファだけ。

 いや、ソファというには座り心地がいささかよくないように思える。そこにカラフルな赤と緑のクッションが置かれている。そこに今までエルマは座っていた。

(とにかく、あの湿気の酷い牢屋から移動できたのはよかった……)

 牢屋で会った超絶美形の顔を思い出す。暗く、ロウソクの灯りでしかディオンの顔を見ていないが、彼だけは桜子が想像した架空の人物なのではないかと思うほど、あり得ないくらい美しい人だった。

(でも、ここの人たちは私と同じ人間じゃないのかも……)

 異世界トリップが本当のところ、なんなのかわかっていない桜子だ。

(でも、腕の痛みは本物……これは夢なんかじゃない……)

「食事を持ってくるわ。扉の向こうは警備兵がいるし、ここは三階よ。逃げられないから」

 エルマは黙り込んでしまった桜子に言った。


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