平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 逃げられないと口に出されて、ここに軟禁されているのだと悟った。

(今はそんなこと、考えられない。まずはこの世界……ここがどんなところなのか知るしかない)

 桜子の返事を待たずに、エルマは部屋を出ていった。

 ひとりになった桜子は窓へ近づこうとベッドから降りる。

 窓は開けられており、風は入ってきたが生ぬるいものだ。

(日本は真冬だったのに……お母さんとお父さん、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな心配している……それとも、私はトラックにぶつかって死んだの?)

 転生ものも、小説では人気である。

(もしかして……私は別人で、以前の記憶があるだけ?)

 桜子はハッとなり、窓の外を見る前に、部屋の中へ向きを変えて鏡を探す。

「この世界に鏡はあるの?」

 桜子はチェストに近づき、引き出しを開ける。中はなにもなく、辺りを見回しても鏡はなかった。

(ない……)

 がっかりして、ポニーテールにしていた髪へ手を伸ばす。捕まっていたひどい場所に寝かされていたため、汗をかき、髪はべったりしている。

 髪を目の前に引っ張ってみる。いつもの黒髪だ。

「私は転生したわけじゃない……?」

 不安過ぎて、思わずひとりごとを口にしてしまう桜子だ。

< 29 / 236 >

この作品をシェア

pagetop