平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「いいえ。あなたさまのお手伝いをするように申しつけられております」
 
 洗婆は座ろうとしない。

「あなたさま、だなんて。私はそんなのじゃないんです。どうか休んでいてください」
「……それでは、休ませていただきます」
「はい! すぐに済みますから」
 
 桜子は洗婆の横の棚に、クリーム色をした固形石鹸と布を見つけて、痛む右手で布を持ち、左手で固形石鹸を動かした。

(うーっ、動かすと痛い。どのくらいで治るかな……痣の具合から見ると一週間くらい?)

 固形石鹸の泡立ちはよく、身体と髪を洗った。
 
 四角い大きな浴槽のような水が張ってあるところから、桶ですくって身体にかける。お湯ではなく水だ。慣れない水風呂にブルッと身体が震えた。

「お、おばあさん、聞いていいですか?」
「なんでしょうか?」
「ここは温かいお湯はないのでしょうか?」

 暑い国だから、水で洗うのが当たり前なのかも、と思いながら聞く。やはり日本人は暑くてもお湯に入りたい。

「ありますよ。向こうにある湯船の中は湯です」

 そう聞いて、桜子はにっこり笑顔になった。

「ありがとうございます! もう少しだけ待っていてください」

 桜子は青いタイル張りの大浴場のような広い湯船に向かった。


 
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