平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 温かい湯に数分浸かった桜子は、洗婆のところへ戻った。

「おばあさん、お待たせしました。行きましょう」

 桜子は洗婆の手を軽く握ると、脱衣所に向かった。洗婆は黙ったまま桜子の半歩後ろを歩いた。

(目の見えないおばあさんが、人を洗う仕事に就いているなんて可哀想……)

 洗婆に同情してしまうが、自分もどんな処遇を言い渡されるのかわからない。

(落ち込まないように、考えないようにしなきゃ)

 脱衣所にエルマが着ていたような薄紫色のドレスが置いてあった。布はオーガンジーのように柔らかく、薄い。

(これじゃあ、胸の形がはっきり見えてしまう)

 困っていると、洗婆が口を開く。

「動きが止まったようですが、どうかされましたか?」
「……おばあさん、長い布はありませんか?」

 それを胸に巻けば透けないで済むと、考えた桜子だ。

「長い布は棚を開けた引き出しに入っております。それをどうするのでしょうか?」

 この国の女性は恥ずかしがらないと聞いたせいで、胸に巻きたいというのは躊躇われた。

「ちょっと、使いたいことが……見てみますね」

 桜子は観音開きの棚を開けて、引き出しの中を見た。そこには先ほど身体を洗ったときに使った布と同じような、白いさらしのようなものがあった。


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