平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
(これなら使える)

 桜子は布を胸に巻きつける。華奢な割には胸がある桜子は、ずれないように丁寧に巻いた。布の最後を巻きつけたところに入れ込む。

 用意された薄紫色のドレスは、チューブトップのように肩が無いものだ。それから、サンダルのような形のぺったんこの履物を履いた。

「おばあさん、ありがとうございました。ひとりで戻れますか?」
「ええ。慣れていますから大丈夫ですよ」

 桜子は洗婆に頭を下げて廊下に出ると、エルマが待っていた。

「イアニスさまが呼んでるわ」

 桜子はイアニスの顔を思い浮かべる。怪我をした手を診ようとした男だ。

「一度部屋に戻って、服を置いてきていいですか?」
「いいわ。戻りましょう」

 足首まであるドレスでは、エルマのようにサクサク歩けない。両方のスカート部分を持ち上げれば歩きやすいのだが。


 部屋に戻り服を置いた桜子は、宮殿の中心部の建物の一階にある広間に連れてこられた 。テニスコート一個分の広さのある謁見の間だ。

 金や銀、宝石があしらわれた花瓶や、タペストリーが飾られている。

 エルマは背筋正しく、桜子の前を歩く。


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