平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 一番奥に、ひときわ豪華なタペストリーが天井からかけられており、桜子はその美しさに感嘆の声を上げる。なるべくキョロキョロしないように歩いていたが、どんなところであるのか知りたい桜子だ。

(ペルシャ絨毯みたい……)

 右端の椅子にイアニスが座っていた。両脇にはラウリとニコが立っている。ラウリは桜子の竹刀を持っていた。

「イアニスさま。連れてまいりました」

 エルマはイアニスの前で両手を胸の前でクロスし、膝を軽く折った。

(あれが、ここの挨拶……?)

 イアニスはエルマに軽く頷いてから、座ったまま桜子に視線を向ける。

(昨日は暗かったからよくわからなかったけど、肌が浅黒い……。整った顔は美術室にある石膏像みたい)

桜子はイアニスを見て、ふとそんなことを思った。

 イアニスは謁見の間の扉が開いてから、エルマの後ろから歩いてくる桜子を観察していた。

 イアニスはエルマから、湯浴みをするところまで特に問題なく、普通の娘のようだと報告を受けている。

(しかし、術師であればディオンさまの身が危険)

 イアニスは口元を引きしめて、冷たい視線で桜子を見る。

 憮然とした表情で見られている桜子は居心地が悪く、彼の鋭いブラウンの瞳から目を逸らしたくなる。

「どのようにして、大柄の男三人を倒した?」
「あの、竹刀という竹で作られた棒でです」

 桜子はラウリの持っている竹刀へ視線を向けてから、きっぱり言葉にした。



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