平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 住まわせてもらっている後宮の部屋の扉を開けた。
 
 次の瞬間、中から誰かが出てきて、桜子はぶつかりそうになった。

「も、申し訳ありません! カリスタさまからお菓子を」

 俯いた女官だった。

「あなたは……」

 以前、桜子が庭を散歩しているときに髪の毛が葉に絡んでしまい、困っているところを助けてくれた女官だった。

 桜子はテーブルのほうへ視線を向けた。そこにクッキーのような菓子があった。

「ありがとうございます……って、もういない」

 お礼を言ったときには、そこに女官はいなかった。あのときもオドオドしていたが。

「まだ怖がられているんだよね……もう! 逃げなくてもいいのにっ」

 桜子にしては珍しく、ラウリに叱責されたことにいら立っていた。

「そりゃ、この国の皇子さまの隣をふっつーに歩こうとした私が悪いわよ? でも、あんな言い方しなくてもいいじゃないっ!」

 テーブルの上の水差しから、コップに水を入れて飲む。次の瞬間、吐き気に襲われた。

(なんで……? 水の中に……?)

 喉も焼けるような痛みだった。

 桜子は助けを呼ぼうと廊下に出た。そこで意識がフッとなくなった。

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