平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「サクラ、この部屋に誰か入ったのを見てはいないか?」
「入ったとき……女官が……慌てて去って……」
 
 桜子はギュッと目を閉じる。胃がムカムカして、めまいがひどいせいだ。

「サクラ! 大丈夫か?」

 桜子の手を握ったディオンは、汗ばんだ感触に息を呑む。

「ひどい具合だ。早く薬を」

 医師は急いで桜子の上体を起こして薬を与えた。薬のおかげですぐに桜子は眠りに引き込まれた。

「ディオンさま」

 イアニスがディオンを呼ぶ。

「その女官が怪しいと思われます」
「そのようだな」

 桜子から詳しく聞き出したいところなのだが、今はそれどころではない。

「可哀想に……。カリスタ、エルマ。サクラのこと、しっかり頼む。少しの容態の変化にも報告を」
「はい。必ず」

 カリスタとエルマはディオンに約束した。

「イアニス、行くぞ。犯人を見つけなければ」

 ディオンは護衛を扉の外と庭につけて、イアニスと出ていった。

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