平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「宮殿の地下牢だよ。ジメジメした汚いところだから、確認するときは別の部屋でやるはずさ。殿下がサクラをあんなところへ連れていくはずはないからね」

 桜子は自分を殺そうとした人と会うのは怖かったが、なぜ自分が狙われたのか知りたい気持ちもある。

「女官が犯人だと確定したら、どうなってしまうんですか?」
「それはまだわからないね。法にのっとって裁かれるが、殺人未遂はかなり重い罪になるだろうね」

 桜子はあのときぶつかった女官を思い出した。オドオドしていて、人を殺そうなど思わないような人に見えた。それに庭での彼女は優しかった。

「カリスタ、すぐに会いたいです」

 もしかしたら間違いで捕まった女官かもしれない。

「すぐには無理だよ。まだ出歩けないだろう」
「女官は自分が犯人だと認めているんでしょうか?」
「ああ。部屋に毒がたっぷり入った瓶があった。証拠はあるから逃げようがない」

 カリスタの言葉に、桜子は首を傾げた。

(たっぷり……あった……?)

 医者は、毒の量が少なかったからこれくらいの症状で済んだと言っていた。

(それならば、どうしてたっぷりあった毒を全部使わなかったの?)

 桜子はそう考えてしまい、眉根を寄せる。

「サクラ、夕食まで眠りなさい。無理をしてぶり返したら大変だ。ディオンさまに大目玉を食らうよ」

『大目玉を食らうよ』のところで両腕を身体に回し、ぶるっと震わせたカリスタに、桜子は笑う。

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