平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
(ディオンさまといい……本当にこの娘は悪い娘ではないのかもしれない……)

「はいよ。はいよ。お前は邪魔だから、出ていっておくれ」

 カリスタは渋い顔のイアニスを部屋から追いはらおうとする。イアニスは「ほどほどにしてください」と言い、肩をすくめて出ていった。

「カリスタ、どこか悪いの?」
「年寄りだから、いいところなんてひとつもないに決まっているじゃないかい」

 笑ってからカリスタはグラスを口にする。

「そんな年寄りじゃないです。お医者さまに禁酒を告げられているのなら、飲んじゃダメです」

 桜子はカリスタの身体を思って、顔を顰める。

「おや、口うるさい孫がもうひとり増えたねえ」
「だって……私はカリスタがいてくれるから、救われているんです。カリスタがいなかったらどうすればいいんですか?」

 桜子の本心だ。祖母のように慕っている。

「私がいなくても、みんながサクラの面倒を見てくれるから大丈夫だよ。ほら、たくさんお食べ」

 カリスタは少ない一杯すべてを飲み、満足そうだった。

 そして桜子の頭の中で、ディオンとイアニスのBLが払拭されることはなかった。


 
< 90 / 236 >

この作品をシェア

pagetop