平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 二日後、桜子は宮殿にある部屋に呼ばれた。そこは『裁きの間』という部屋だ。

 長身のディオンよりも大きく、角が生えた人間のような金の像が置かれており、桜子は怖さですぐは近づけなかった。

(この部屋はなんなの……?)

 エルマに連れてこられたが、なにも言われなかった。

 金の像は、桜子が想像していた悪魔のようにも見える。腰布と、右手に三股のような棒を顔の横に立てて持っている。

 遠巻きに見ていた桜子だが、数分経つと、それほどその像が怖いとは思わなくなって、素材や顔の細部を見ようと近づいた。

 背伸びをして、手を伸ばしおそるおそる顔に触れる。

「サクラはパベル神が怖くないのか?」

 背後から声をかけたのはディオンだった。

 振り返るとイアニスもおり、もちろんディオンの護衛であるラウリとニコもいる。ディオンに会うのは、腕枕をして眠ってしまった日以来だ。

 今日のディオンはものものしい雰囲気の黒い長衣を着ている。イアニスも同じだ。違うのは、金糸で黒い長衣に刺繍が施されているところである。

「この像はパベル神というのですか?」
「わが国で裁きの神として崇められている。パベル神の前で嘘をつけば、数日以内にひどい目に遭うと言い伝えだ」

 ディオンの説明に桜子は頷いた。

「ここへ女官を呼ぶんですね?」
「そうだ。身体は大丈夫か? まだのようなら後日にするが」

 桜子は強く首を左右に振る。

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