No border ~雨も月も…君との距離も~
金沢の竪町商店街は 北陸最大のファッションストリートでもある。

その 一角のパーキングに車を停めて、薄暗いビルとビルの間を行くと 歩行者天国の大通りから ひとつ奥まった所に、その店はあった。

「 いらっしゃいっ! 」

今日も チャー君の髪は、ヤンチャに跳ね上がっている。

「 ねぇ…。シン? ここは? 」

入口は狭く、言ってしまえば……入りにくい店かも…。

ボードに書かれた “ welcome♡” が、どーも しっくり来ない…(苦笑)

「 チャーの店だよ。
こいつ、本業はシルバーアクセ 作ってんの。」

「 へぇ~。すごーい!手作りなんだぁ。
見て、これ…細かいっ。
ガイコツの中に…ガイコツ入ってるっ!(笑) 」

私は ショーケースに 両手をついて目を 見開いた。

チャー君は 嬉しそうにシルバーのドクロの指輪を私に 手渡して見せてくれる。

クリスマスの日の クラブの雰囲気とは違って…
いかにも 芸術家っぽい エスニックな民族衣装の彼とシルバー達が……スゴく 説得力。

「 2人……。 仲良いよね~!(笑) 」

「 そんなことないです! さっきもケンカしたし。」

私は、シンの前で嫌味っぽく 即答する。

「 マジかぁ~(笑) 」

チャー君が 額に手を当てて 面白そうに笑う。

「 こいつが……勝手に怒ってるだけだよっ。」

「 だってっ。シンが……あんなこと 言うから。」

“ こうして 紗奈といる所 見られると 何かとマズイっしょ。”

……さっきの シンの言葉が やっぱり刺さる。

傷つくよ……。

私は半分スネながら、ショーケースが 縦横に所狭しと 並ぶ店内を見て歩く。

ブラックライトに浮かび上がるアクセサリーは、如何にも男の子が好きそうな 分厚くて 厳ついデザインの物が多い。

どこに 身に付けても重たそう……。

「 てか、彼女さんに こんなのどう? 」

「 えっ。 …………。」

チャー君は ショーケースの鍵を開けて 引き出しの中央から キラッと光る それを摘まむと、私の手のひらに乗せて ニッと白い歯を見せて 笑った。

「 コレ 指輪なんだけど、ここの突起みたいなデザインの部分に ……チェーンを通すと……
ほら、チョーカーのトップにもなるんだ。」

「 キレイ……。すごく 素敵。」

「 もちろん、二人でペア……ありますけど。(笑)
仲直り……ってことで。」

「 チャーーーー。まさかの、商売上手ってやつ……。(苦笑) 」

「 毎度。チェーンも 2人分っすね!」



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