No border ~雨も月も…君との距離も~
チャー君は、シンと私の肩をポンと同時に叩いて……また、ニッと白い歯をみせた。

「 シンなら……特別、出世払いOKッスよ。」

「 マジでっ!(笑) 絶対……嘘だなっ(笑)!」

と、言って カードを レジに置くシンに……

「 じゃっ。一括で…。 特別価格にしとく(笑) 」

と、チャー君は笑った。

「 シン、本当に……。いいよ、私。
だって、それなりにいい値段してる……。」

私は、思わず小声で シンに目配せをする。

「 高価…でもないけど (笑) チャーのデザイン、すごく好きなんだ。ソレ…俺に 貸して。」

シンは、チェーンに 指輪形のトップを通して…私の背後に廻る。

そして、胸元に チョーカーを取り付けて、

「 いいじゃんっ。 」

……と

私の 顔を見て 少し照れた表情をする。

それから、店内の中央にある 小さめの鏡に 自分を映すと 同じチョーカーを 自分で付けた。

前髪を直したり、ジャケットの肩を直しつつ……

「 いいんじゃね。」

なんて、呟いて 両手をポケットに 突っ込む。

その様子を見て チャー君も 満足そうに、

「 いいんじゃねっ!」……と

私とシンを交互に見て、ニィーっと笑った。

もう……完全に やられてる (苦笑)

チャー君にも、シンにも。

シンは……本能的に こうやって…エサを与える。

たぶん、そこに下心も 悪気もなく…男の本能だとしたら なんか……スゴい。

いつも、私を不安にさせて…イラつかせて…
幸せにする。

ケンカをしたら、いつも先に 折れてくれるのはシンの方で……
その優しさに 気付いた私は それ以上に反省する。

それ以上に……シンを愛しく思う。

罠……? 本能の…罠。

笑い声、温もり、突然のプレゼント……
それから、夢を一緒に追いかけること。

彼の傍に いるようになってから

彼がくれた 幸せや 喜びや ドキドキがいくつあるだろう。

店を出た 夕方の空は、不思議なオレンジと紺色が溶ける マーブル色。

歩道には 2人の影が細く長く 伸びていて、まだ
見たことのない 道の先へと 続いていた。

永遠……ってあるのかな。

生まれて初めて……永遠が欲しいと思った。

目の前に続く この道が どうか……まっすぐに、
2人の道で ありますように…。

このままずっと、手を繋いで…同じ歩幅で歩いて行けたなら、

私の 存在は…シンの自由の中にあればいい。

シンに……委ねる。

私は、彼の手を握りながら…もう片方の手でチョーカーのトップを握った。

永遠……があれば いいのに。

そうしたら、怖くないのに。


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