エリート御曹司は獣でした
久瀬さんは、うちの会社の親会社的な存在にあたる、菱丸商事の会長の孫である。

今は統括主任というポジションにいる彼だが、来年には係長に昇進すると噂されており、その数年後には課長、部長と、他の社員より出世が早いと予想される。

ここは大企業傘下のグループ会社なので、若者が役職に就くのは有り得ないほど難しく、係長は四十歳くらいでなるのが普通である。

それを二十代で実現させようとしている久瀬さんは、特別な存在に違いなく、ゆくゆくは菱丸商事の取締役に収まるのだろう。


けれども彼のスピード出世は、会長の孫だからという理由だけではないと、私は思っている。

一緒に仕事をしていれば、彼の有能さがひしひしと感じられる。

顧客のニーズに常に最高のプランニングで応える彼は、抱えている仕事が誰よりも多い。

それは、顧客から名指しで頼まれるからだ。

自分の仕事のみならず、私のような下っ端社員の面倒もしっかりみてくれて、リーダーシップの才覚も優れているような気がする。

同年代の社員中で抜きん出て仕事ができる久瀬さんなので、ひとりだけ異常に出世が早くても、きっとやっかむ人はいないのではないかと思われた。
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