エリート御曹司は獣でした
「私にやらせてください。全力で頑張りますので、お願いします!」

「いや、相田さんを信じていないわけじゃないけど、それは俺がやる……やる? やりたい……奈々子とやりたい」

「ええっ!? 久瀬さん、その“やる”じゃないですよ!」


せっかく引き出した真面目な久瀬さんの意識が、また潜ってしまい、狼の彼が優勢に立つ。

全開にされたブラウスの合わせ目から、彼の手が侵入して、下着の上から私の胸をもてあそんだ。

慌ててその手を押さえて、「聞いてください。八重子ちゃんが、この前ーー」と次の話題を持ち出す。


それは一昨日のことで、A社へメールで送る資料をB社へ誤送信したという、八重子ちゃんの単純で重大なミスだ。

その日、久瀬さんは、原紙加工会社の工場がある長野に日帰り出張であったため、その出来事を知らないはず。

後輩の失敗を告げ口するようで心苦しいが、私は最近これといったミスを犯していないので、彼を焦らせるには八重子ちゃんの話をするしかない。

ど天然の八重子ちゃんは、うっかりが多く、同課の私は冷や冷やさせられているけれど、今ばかりは話題提供をありがとうという心境だ。

< 130 / 267 >

この作品をシェア

pagetop