エリート御曹司は獣でした
私の期待通り、「それで、どんな対処をしたんだ!?」という焦ったような声が、耳元に聞こえる。


幸いにも誤送信したのは機密資料ではなく、A社にはすんなりと許してもらえた。

謝罪と対応は課長がしてくれて事なきを得たと説明したら、久瀬さんはホッとしたように息を吐いた。

その後にはまた、狼の方の意識が強くなる。


「問題が解決しているならよかった……いや、まだ解決していないな。服が邪魔で触りにくい。脱げよ。早く抱かせろ」

「まま、待ってください! 八重子ちゃんのミスは、まだ他にもあってーー」


頭の中にストックしておいた八重子ちゃんの失敗談を、ここぞとばかりに暴露していく。

すると久瀬さんの意識は、狼と真面目さの間を短い間隔で行き来して、やがて「うっ」と呻いて私から体を離した。


ドアに背を預けて苦しげに呼吸を乱し、数秒すると大きく息を吐いて、ぼんやりとした目で私を見る。

「戻った……」との疲れた声を聞いた私は、すぐさま腕時計に視線を落とした。


久瀬さんが変身を完了した時と、元に戻った時に、腕時計で時刻を確認するのは忘れてはならない作業だ。

変身時間を少しずつ短くし、最終的にはゼロにするのが目標であるから。

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