エリート御曹司は獣でした
「そうよ、そうよ」と彼女の同期ふたりも、焦り顔で同意する。

久瀬さんが顔だけ振り向いて、斜め後ろに立つ私を見たのは、乗友さんの話が本当なのかを確認するためであろう。

彼女たちからの視線も私に注がれていて、それは懇願するような感じのものであった。


憧れの久瀬さんに嫌われたくないという気持ちは私にもよくわかり、かつ彼をこんなしょうもないことに巻き込んではいけない気もしていた。

私が嫌がらせをされたなどと言えば、同課の先輩社員として守らなければと思わせてしまいそう。

ただでさえ仕事のことで皆に頼られ、多忙を極める彼なのに、余計な心配と手間をかけさせてはいけないのではないだろうか。


そう思う一方で、せっかく助けに来てくれた彼に、嘘をつくのも間違えている気がして、私は返答に迷っていた。


「確かに、ファッションとメイクの話はしていたんですけどーー」


言葉尻を濁したら、察しのいい彼は、自ら真実にたどり着いてしまう。


「相田さんのファッションとメイクを批判していたということか? 自分たちと比較して、地味で流行を追っていないと、けなしていたんだろ」



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