エリート御曹司は獣でした
さすが、ど天然の八重子ちゃん。

気を使うべき点が大幅にずれている。


八重子ちゃんに回りくどい言い方をしても伝わらないのは知っているので、私は照れ笑いしながらハッキリとお願いした。


「八重子ちゃん、助けに来てくれたのに、こんなこと言うのは気が引けるんだけど、出ていってもらってもいいかな?」

「あ、やっぱりそうですよね。すみません。すぐに出ていきます。それからゆっくり続きを楽しんでください」


いや、もう無理だよ……。


久瀬さんも、声をかけられるまですっかり八重子ちゃんのことを忘れていたらしく、今は大きな羞恥の中にいるみたい。

窓の桟に手をついて、「月が綺麗だな」と独り言を呟いているが、耳が赤くなっているのが丸わかりだし、窓ガラスに恥ずかしさを堪えているような顔が映っている。


八重子ちゃんが出ていってくれても、『仕切り直してキスしましょう!』とはならないだろう。

ただ、次のポン酢体質治療のことや、乗友さんたちと今後どのように付き合っていけばいいかなど、話し合いたいことがあるので、ふたりきりにしてほしかった。


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