エリート御曹司は獣でした
久瀬さんは大抵いつも、お昼を自席で食べている。

誰かと一緒にランチに出かけることはなく、それも同僚とはプライベートな付き合いをしたくないという彼の心の表れだろう。

それなのに、ランチデートという条件がついたお弁当を無理やり渡されるとは、モテる男は大変だと私は同情する。

久瀬さんが、人付き合いを煩わしいと感じてしまうのも、仕方ないのかも……。


ふたりの様子をチラチラと盗み見ていたその時、私のお腹が小さく鳴った。

昼食を取ってから二時間半ほどが経ち、体が次の肉チャージを要求している。

それで私の意識は簡単に久瀬さんから逸れ、机の引き出しの上段をそっと開けた。

そこには事務用品ではなく、ビーフジャーキーやサラミを収納しており……。


両隣と向かいの席は男性社員で、取引先と電話していたり、キーボードに指を走らせていたりと、それぞれの仕事に集中している様子。

誰もこっちを見ていないと確認した私は、ビーフジャーキーの袋を素早く取り出し、青いファイルの間に忍ばせた。

そして、何食わぬ顔をして席を立つ。


自宅での肉パーティーに同僚を呼んでいる私なので、無類の肉好きだということは、この部署の多くの社員に知られていると思う。

けれども、昼食時でもない業務中にも、我慢できずに肉チャージしていることを知られるのは恥ずかしい。

それでこうしてこっそりと、肉を食べるために部署を抜け出しているのだ。
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