エリート御曹司は獣でした
久瀬さんがなぜ今、このカクテルについて尋ねたのか……。

『飲んでみますか?』とグラスを勧めたいところだが、もしかして話をはぐらかそうとしているのではないかと思い、じっと無言で彼を見る。

変身体質になってしまったキッカケは、言いたくないなら無理に聞き出すまではしないが、できれば教えてほしい。

新たな治療法のヒントが、隠されているかもしれないと思うからだ。


久瀬さんは、グラスの中でわずかに炭酸の気泡を上らせる、濃い赤紫色の液体を見つめていた。

話を逸らさないで……という願いを込めて、彼が口を開くのを待つ。

数秒して私に視線を戻した彼は、フッと笑って話しだす。

それによると、どうやら、ごまかそうとしたわけではないとわかった。


「コーラ、昔は好きでよく飲んでいたんだ。それが……ポン酢のように変身はしなくても、苦手な飲み物になってしまった。子供の頃は心的ダメージへの対処や、感情のコントロールがうまくできなかったからな」

「キッカケを、話してくれるんですね……?」

「話すよ。奈々子には聞いてほしい。少し長くなるけどーー」

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