エリート御曹司は獣でした
久瀬さんは子供の頃、宮永さんという一家と、家族ぐるみの親しい付き合いをしていたそうだ。

母親同士が幼馴染ということで、お互いの家を行き来し、レジャーや旅行にも一緒に出かけていたのだという。

久瀬さんが小学校六年生、十二歳の夏休みには、彼と母親は、軽井沢にある宮永家の別荘に招かれ、一週間ほど滞在した。

久瀬さんに兄弟はいないので、宮永家の子供たちと交流することは、彼にとって嬉しことであった。


宮永家の子供は、都内の由緒正しき女学院に通う十七歳の長女、小百合(さゆり)さんと、弟の中学一年生、十三歳の幸秀(ゆきひで)くん。

小百合さんは美人で優しく、久瀬さんを弟のように可愛がってくれたため、思春期に突入していた彼は、密かに憧れの気持ちを抱いていたそうだ。

一方、ひとつ年上の幸秀くんは、良き遊び相手……というよりは、遊ばれていたのだという。

幸秀くんはかなりのいたずらっ子で、夏休みの宿題に落書きされたり、机の引き出しを開けたら蛙が飛び出してきたりと、日々なにかしら困らされていた。

けれども迷惑とまでは思うことなく、幸秀くんと過ごすその夏を、久瀬さんも楽しもうと考えていた。


ところが……緑あふれる軽井沢で過ごす滞在最終日に、それは起きた。

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