エリート御曹司は獣でした
彼の口内には、まだはっきりとポン酢の味が残っていた。

これが、ポン酢と性的興奮が結びついてしまった瞬間であったーー。


グラスのワインをひと口飲んだ久瀬さんは、「あの後、俺は気を失って、その場で倒れたらしい」と言った。

その声には疲労が感じられ、苦いものを飲んでしまったかのように顔をしかめている。

まだ話は終わっていないようなので、私は口を挟まず、真剣に続きを聞こうと背筋を伸ばしている。

ポン酢による変身体質のキッカケを話してくれるのは、私を信頼してくれてのことだろう。

それは嬉しいことだが、苦しげな彼の顔を見ていると、喜ぶことはできなかった。


久瀬さんは小さなため息をついてから、続きを話す。


「使用中の札を外したのも、幸秀だった」


庭でのテニス中に、『トイレ』と言っていったん建物内に戻った幸秀くんは、小百合さんがシャワーを浴びていることを知り、いたずらを企てたそうだ。


「幸秀は、俺にしたことの全てが母親にバレて、随分と叱られていたな……」


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