エリート御曹司は獣でした
私限定で欲情を抑えられなくなるとは……なんて素敵な体質なの。

もったいなくて治療はできません……。


それほどまでに深く愛されているのだと歓喜して瞳を潤ませる私は、言葉が出ずに首を縦に振って応えた。

フッと笑ってくれた彼は、私の瞼に口づけてから、頬、首、さらにその下へと唇を滑らせていく。

縦縞しじらの浴衣から腕を抜き、腰まで落としたら、逞しい彼の裸体が行灯の明かりに照らされて、私の目に艶めいて映った。

体のあちこちに触れられて甘い声を漏らせば、恍惚の表情を浮かべた彼が私をじっと見下ろし、ペロリと唇を湿らせて言う。


「食べてしまうのがもったいないほど、綺麗だ……」


久瀬さん、それは旅先マジックですよ……。

い草の香りに真っ白なシーツと、はだけた浴衣。

どうやら行灯の橙色の明かりは、彼だけではなく、私のこともなまめかしく照らしてくれているみたい。

それに助けられ、いつもより自信を持つことができた私がキスをせがめば、彼は嬉しそうに応えてくれた。


たっぷりと時間をかけ、心も体も溶かされて……やがて、ひとつになる時がくる。


「痛かったら言って」

「はい。あっ……ああっ!」


痛くても、やめてほしくない。

この行為を嬉しいと思えるのは、偽物ではなく本物の恋人になれたからであろう。

極上ステーキを頬張るよりも、ずっと満たされる幸せがここにある。

「愛してるよ」と耳元で囁かれて、彼にしがみつきながら、とろけるような旅の夜は更けていった。


【完】

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