エリート御曹司は獣でした
「えっ!?」と驚きの声をあげる私の腰は、彼の左腕によってしっかりと拘束され、逃げることはできない。

右手で顎をすくわれると、わずか拳ふたつ分の距離には、色気を溢れさせる端正な顔があった。

思わず頬を熱くしたら、ペロリと下唇を舐めた彼が、信じられないことを口にする。


「お前、可愛いな。なぁ、俺に抱かれてみない?」

「はい……!?」

「いい返事だ。なんだろう、この香り。すごく、うまそう」


問い返しただけで、決してオーケーしたわけではない。

うまそうな香りとは、おそらくビーフジャーキー臭で、そんな女に欲情する男性がいるとは予想外だ。

いや、それよりもなによりも、この人は本当に久瀬さんなの?

姿形は同じでも、私の知っている彼とは、全くの別人に思えるんですけど……。


驚きすぎて、心の中の疑問は声にならない。

目を白黒させる私をニッと笑い、「いただきます」と甘く囁いた彼は、私の唇を奪った。

その行為に心臓を大きく跳ねらせたら、ブラウスのボタンをひとつふたつと外され、私の混乱はさらに増す。


これは、夢……?

全女性社員憧れの久瀬さんが、私ごときにセクハラするなんて、あり得ないもの。


ついに現実を信じられなくなった私は、拒否することもできず、されるがままになっている。
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