エリート御曹司は獣でした
キスは軽いものでは終わらず、柔らかな舌先が私の口内に侵入し、淫らな水音が立つ。

ブラウスのボタンを三つめまで外されたら、彼の右手が襟元から差し入れられた。

しかし、私の胸に触れる前に、急に「うっ」と呻いて、再び彼は苦しみだす。


こ、今度はどうしたの……!?


動揺する私を放して後ずさり、壁に背をぶつけて止まった久瀬さんは、肩で荒い呼吸を繰り返している。

苦しげに顔をしかめ、なにかに抗おうとするかのように、片手で目元を覆って首を横に強く振っていた。


その様子に、驚きの波は少しも引くことのない私だが、加えてショックも受けている。

ビーフジャーキーの香りがするキスは、そんなにも苦しかったのかと……。


数秒すると久瀬さんの呼吸は落ち着きを見せ、最後は大きく息を吐き出して平常に戻る。

「おさまったか」と疲れたように言った彼が、目元から手を外したら……一歩の距離で私と視線が合い、なぜか目を見開き驚いていた。


呆然と立ち尽くすばかりの私の服は乱れたままで、唇は濡れて、淫らなキスの余韻を残している。

すると久瀬さんが、血相を変えて、謝ってきた。


「それ、俺がやったんだよな? ごめん、本当に申し訳ない! 謝っても許されないことだと思うが、せめてものお詫びにーー」

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