エリート御曹司は獣でした
私が前のめりになって近づけば、彼は上体を反らして距離を開けようとする。

「もう少し離れてくれないかな」という注意を聞かず、椅子からお尻が落ちそうなほどに接近した私は、わずか拳三つ分の距離で、声を大にして彼を憐れんだ。


「みんなでワイワイと肉パーティーをするのは、すごく楽しいですよ。参加したくてもできないなんて、人生半分……いえ、四分の三は損してます!」

「そんなに……?」

「肉パーティーできない久瀬さんが可哀想で、悔しいです。涙が止まりません!」

「いや、そこまで憐れまれるほど、参加したいわけではないよ……」


久瀬さんの笑みが引きつっていることに気づいても、私は同情を止められない。

いつもお世話になっている先輩が困っていれば、全力で力になろうとするものでしょう。

なんとかしてあげたいと強く思った私は、彼の手を放して立ち上がると、両手を握りしめて力強く宣言する。


「その体質、私が治してみせます。任せてください!」


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