エリート御曹司は獣でした
有名医師でも治せなかった彼の変身体質を、私の力でどうにかしようと本気で考えていた。

ポン酢を摂取してセクシー男になった彼を、正気に戻すべく、色々と試してみたい。

例えば、仕事に関して重要な話をしたり、笑わせてみたり、性欲が減退するような言動をとってみるのもいいかもしれない。

色気のない私なので、その作戦には自信がある。

一回の変身時間は三分ほどと言っていたが、早めに正気に戻るように私が働きかけて、少しずつ変身時間を短くし、最終的にはゼロにしたい。

それを熱く説明して、協力を申し出た。


「久瀬さんは確か独り暮らしでしたよね? ご自宅に通います。私と一緒に特訓して、ポン酢を克服しましょう」


言っておくが、これを機に憧れの彼に接近しようという、やましい思いは一切ない。

願うのはたったひとつ。

「その体質を治したら、みんなと一緒に久瀬さんも、しゃぶしゃぶパーティーを楽しみましょう!」

純粋な、その気持ちだけである。


けれども、闘志を燃やす私を困り顔で見上げる彼は、落ち着いた声で私の提案を断った。


「やめた方がいい。それを実行すれば、相田さん、間違いなく俺に食われるよ」

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