エリート御曹司は獣でした
すぐに半分にカットされたスダチが運ばれてきて、それを全員の軍艦に少量ずつ絞った長野さんは、スダチの皿を店員に返した。


「相田さん、食ってみな」

「はい。いただきます……」


吸い物に入っていた白子は加熱されていたが、軍艦にのっているものは生である。

まだ完全には抵抗感が抜けておらず、恐々と口にした私であったが……ひと噛みすれば、先ほどと同じように、「美味しいです!」と喜んだ。

口に入れたらすぐに溶けてしまうクリーミーな白子は、スダチとの相性が抜群だ。

さすが食道楽の長野さん。絞ってもらってよかった……。


すっかり食わず嫌いを克服した私は、今度、兄に、白子を食べている写真をメールで送ってやろうと考えていた。

きっと驚いて、妹の成長を頼もしく感じるに違いない。


そんなことを考えつつ軍艦を食べ終えたら、久瀬さんが戻ってきた。

「私の分も頼んでくださったんですか。すみません」と、彼は長野さんに笑顔を向ける。


久瀬さんの前には、ノドグロとほっき貝、金目鯛の炙り、車エビに真鱈の白子の軍艦と、五貫も握りが並んでいる。

長野さんが笑いながら言う。


「久瀬さんは若いしガタイがいいから、まだまだ食えるだろ?」

「少しなら……」

「少しとは、二十貫くらいかい? まずは軍艦から食った方がいい。海苔がパリッとしているうちにな」
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